トレーニング負荷#22026-06-22

「きつさ」は根性で決まらない ― RPE(主観的運動強度)の正体

「きつさ」は根性で決まらない ― RPE(主観的運動強度)の正体
「同じペースなのに、今日はやけにきつい」。それを「メンタルが弱いからだ」「気合いが足りない」と片づけていませんか。2026年の最新研究は、その「きつさ」の正体に意外な答えを出しました。

結論:RPEは"性格"ではなく"痛み"を映している

ランニングの強度管理に欠かせない指標が RPE(主観的運動強度)。「どれくらいキツかったか」を自分の感覚で点数化するもので、心拍やGPSが無くても使える優秀なツールです。

でも長年、こんな疑問がありました。「RPEって結局、気の持ちようでは?」「メンタルが強い人は同じ運動でも楽に感じるのでは?」

Bojicら(2026, Scientific Reports)の研究は、ここに明快な答えを出しました。

主観的な「きつさ」を決めていたのは、性格でも不安傾向でもなく、運動中に生じる"痛み"だった。

研究の中身

研究チームは、屋外の持久系イベントに参加した 144名のレクリエーション持久系アスリート(トレイルランナーやハイカーら)を対象に、横断的に調べました。

測定したのは大きく3種類。

  • 痛み:運動で生じた痛みの強さ(最大・平均)と不快さ
  • 心理特性:性格傾向、痛みの破局的思考、不安感受性、不安・抑うつ症状
  • 負荷とRPE:努力で補正したペースと時間(外的負荷)、そしてセッションRPE(sRPE)

つまり「きつさ(sRPE)は、痛み・心理・実際の運動量のどれで説明できるのか?」を同時に比べたわけです。

主要な結果

  • 痛みだけが、sRPEと一貫して結びついていた。 痛みが1段階強まるごとに、主観的なきつさは約13〜19%増加
  • この関係は、年齢や経験などの要因をすべて調整しても有意なままだった。
  • 一方で、性格・不安傾向・抑うつといった心理特性は、きつさの説明にほとんど寄与しなかった
  • 外的負荷(ペース×時間)よりも、その場の痛みのほうがsRPEをよく説明した。

著者らは「sRPEは外的負荷や心理特性よりも、運動中の痛みを主に反映している可能性がある」と結論づけています。

何が言えるのか

ここから、ランナーにとって大事な示唆が3つ出てきます。

  1. 「きつい」は気のせいでも根性不足でもない。 それは身体が出している実信号(痛み・負担)に近い。無視せず、データとして扱ってよい。
  2. だからRPEは負荷管理に使える。 その日の「きつさ」が高いのは、身体に余分な負担がかかっているサイン。ペースや量を素直に調整する根拠になる。
  3. 「メンタルで押し切る」は本質的な解決ではない。 きつさの背後に痛み=負担があるなら、無理に上書きするより、原因(疲労・故障の芽・オーバーロード)を見に行くほうが賢い。

もちろん注意点もあります。これは横断観察研究なので「痛みがきつさを生む」という因果まで断定はできません。対象もレクリエーションのトレイル/ハイクで、トラックのレースとは文脈が違います。それでも「RPEは主観の気まぐれではなく、身体由来の信号だ」という方向性は、現場感覚ともよく合います。

まとめ

  • RPE(きつさ)を主に決めていたのは、性格や不安ではなく"痛み"だった
  • 痛みが1段階上がると、きつさは約13〜19%増える
  • だからRPEは「身体からの実信号」として負荷管理に使ってよい――「気合いが足りない」で片づけない
トレーニングに活かすなら 「きつさ」を毎日の数値として残すと、調子の波が見えてきます。OptiRun BASE では、セッションRPE(主観的強度×時間)を内的負荷として記録し、ACWR(急性慢性負荷比)に反映。「今日はやけにきつい」が続くときに、負荷をかけ過ぎていないかを客観的に確認できます。

参考文献

  1. Bojic, S., et al. (2026). Perceived exertion reflects exercise-induced pain rather than psychological characteristics in recreational endurance athletes. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-026-55769-2